記事番号:T00000166
<事例5 前回のつづき>
(前回のあらすじ)B社は創業40年の台湾企業であり、創業者の周氏は裸一貫から創業し、現在では500人の従業員を雇用する会社となっていた。高齢の為、後継者問題で悩んでいる周氏は経営コンサルタントに相談する事にした…
…ここはB社の董事長(代表取締役に相当)室。
周氏の考えと悩みはこうであった。
創業間もない頃は経営も不安定だった。
そんな明日をも知れぬB社に入社し、周氏を信じて努力してきた者が現在の中高年幹部達である。
その後会社は急成長を遂げたので、幹部達には新しく何かを創造するというより、決められた事を正確に行うという能力が必要とされていた。
また、会社規模の小さかった頃は周氏がワンマンで経営判断をしていたため、勤続年数の長い幹部達は「自分達で考える」という事をあまりさせてこなかった。
「幹部達のスキルと経営環境とのミスマッチが起こってしまったのは自分の責任」と周氏は考えている。
20~30代の社員達は学歴が高く創造性があり、現在のビジネス環境に求められるスキルを保持しているものの、経験と会社に対する忠誠心が弱いということだった。
検討を重ねた結果、最終的に周氏が選択した結果は次の通りである。
1. 経営診断を行いB社の状況を把握する。
2. B社の実情にそった「幹部研修」カリキュラムを作成
3. 1年間をかけて全ての幹部と幹部候補に実施
4. 研修結果を定量化評価により合格者決定
5. 「幹部研修」の合格者を対象にB社の実情に沿った「経営幹部研修」カリキュラムを作成
6. 幹部研修合格者を対象に1年間を掛け経営幹部研修を実施
7. 研修結果を定量化評価により合格者決定
周氏の意図は、こうである。
中高年幹部達のスキルが現在の経営環境に合わないと言う理由で、若い者達を抜擢したり、外から経営者候補を連れてくるのはアンフェアーである。
若い幹部候補の者達も含めて、2年間掛けてスキルアップを行う場を提供し、研修を通じて努力し、スキルアップが実現できる者をふるいにかけ、選抜する。
そして2年間の研修の結果、努力しスキル要件を満たした者の中から後継者を育て上げる。
もし、候補者がいなかった場合は外部から後継者を連れてくる。
というものであった。
こうして、B社では毎週土曜日を研修日として2年間に渡る過酷な研修がはじまったのであった…
<解説>
人材を育成するには長期的視野に立った育成戦略が必要である。
目先の業務遂行のみに捕われていてはB社の様に環境と人材スキルのミスマッチが発生してしまう。
ワイズコンサルティング 吉本康志