記事番号:T00000169
●モチベーション向上策(その1)
「企業は人なり」と言われる様に、社員のモチベーション向上は経営者にとって大きな問題の一つです。
弊社でもこれまでに多くの企業のモチベーション向上策をお手伝いしてきましたが、成功のコツは「科学的に、システマティックに行う」事だと考えております。
モチベーションは様々な要素が複雑に絡み合い成り立っており、単に給料を増やせばモチベーションが向上する訳ではありません。
特に最近の台湾では、過去の「報酬」や「ポジション」という一局集中的なモチベーションから、「安定」や「スキルの向上」「仕事での達成感」等を加えた多角的なモチベーションに変化してきております。
<事例9 モチベーション向上>
日系の輸入販売業Y社の山本総経理は、台湾駐在2年目であった。
1年間台湾に駐在して台湾のビジネス環境や自社内の状況は大体把握する事ができたので、今年は大きな改革に乗り出そうと考えていた。
この1年間、社員から「うちの給与レベルは低い」とさんざん聞いていたので、まず大幅なベースアップを行った。
次に現地人営業部長から要望があった営業担当者の増員と「営業報奨金制度」を導入した。
更に毎月台湾の経費で日本からエンジニアを呼び、製品知識の研修も行った…
…そして1年間が過ぎたが、売上は伸び悩み、経費が膨らんだ分利益は減る結果となってしまった。
<解説>
山本総経理駐在3年目に「組織活性化診断」の依頼を頂きました。
その中で総経理の2年目の施策が効果を上げなかった原因は、以下の通りでした。
1. Y社の扱う製品は競合が多く、また市場自体も既に成熟市場となっており、営業担当者が多少やる気になった程度では売上増は見込めない。
2. 営業報奨金制度はよくできていたものの、目標売上と実績の差額が月次決算が終ってからでないとわからず、月途中で達成率が幾らなのかが誰にもわからない状況であった。
また、たとえわかっていたとしても、Y社のビジネスは何ヶ月も前からの種まきが必要なため、短期の頑張りでは打つ手がない。
3. Y社の給与水準はもともと同業と比較してもそれほど低くなく、そもそもY社の社員は「ゆったりとした安定的な生活」を望む人が多かった為、報奨金による収入の増加は多くの社員にとって効果的なインセンティブにはならなかった。
Y社を次の成長軌道に乗せるには「明確な経営、営業戦略」と「戦略を実施する為のスキルアップ」「戦略実施をサポートするシステム(しくみ)」がトータルで必要であり、部分的な対処療法では大きな効果を上げる事は難しいのであった。
弊社へご相談頂く労務問題の多くのは「労務問題」と片付けられるほど、状況は単純ではありません。
「社員がやる気になる→会社が良くなる」と短絡的に考えず、科学的に根本原因を考える必要があります。
ワイズコンサルティング 吉本康志