記事番号:T00000170
● モチベーション向上策(その2)
前回、単に給料を増やしただけではモチベーションは上がらないという事例をご紹介しましたが、金銭的報酬は大切な要素の一つである事は変わりません。
台湾において金銭的報酬でモチベーションを上げるには、まず「終身雇用」の概念を捨て去る事が大切です。
最近は日本でも終身雇用が崩れてきたとは言われていますが、社会の仕組みや考え方はやはり終身雇用時代のままです。
例えば、上場企業で働く40歳の課長さんが依願退職したとしたら、現在より良い労働条件の仕事が見つかるでしょうか?(ヘッドハンティングの場合を除く)
多くの場合は、現在より悪い労働条件になってしまう事が予想されます。
台湾では同様の条件で依願退職しても、更に条件の良い仕事を見つける事が可能なのです。
したがって、「終身雇用」が前提になっていませんので、社員の意識や社会のルールに以下の違いが生まれます。
1. 今頑張って、将来出世した時に多く貰うという考えはない。
(今頑張った分は今貰わなくてはならない)
2. 上司が部下を統率するには、パーソナリティーが必要。
(将来も上司である可能性は非常に低いので、上司の支持命令が不合理であれば従わない)
3. 一生懸命やった人とそうでない人の差が小さければ、誰もやらなくなり、優秀な人ほど早く辞めてしまう。
<事例10 ボーナス支給>
日系企業L社の今期の業績は業界全体の不景気も有り、台湾法人設立以来の赤字を計上した。
総経理の増田氏は「ボーナスを減額するのは忍びない」と思い、本社と掛け合い、今期も例年通り2ヶ月の年末賞与を支給した。
増田氏は「赤字でも例年通りの支給をしたので、社員は会社へ感謝し、忠誠心が増すのではないか」という考えもあった。
次の期には社員の努力もあり、利益が出たが、社員からボーナスの増額を要求された…
社員達の理屈はこうである。
「皆が頑張った結果、今年は利益が出た。昨年赤字でも例年通りのボーナスを出せたのだし、今年は増額するのが当然。」という事であった。
増田氏はこの要望を却下したが、旧正月明けに優秀な社員達が数名離職する結果となってしまった…
<解説>
賞与を固定で出すというのは極めて日本的発想です。
賞与はもともと利益配分なのですから、業績の悪い時期に無理に出す必要は無く、社員達もそれは理解しています。
しかし、業績の良かった時は、それを分配しなければ逆に忠誠心を無くさせる結果となりますので、ご注意を。
ワイズコンサルティング 吉本康志